リベラルアーツ
2023.08.10
【酒池書林】宮本武蔵『五輪書』
東京大学名誉教授・早稲田大学教授 藤本隆宏
経営戦略には、ポーターを代表とするポジショニング学派と、バーニーを代表とする資源ベース学派があって世界を二分していますが、実はその真ん中にもう1つ「場の位置取り」学派があり、それが剣豪・宮本武蔵の『五輪書』の兵法だという極めて独創的な見解が、自身も剣道家で東大剣道部長も長く務めた藤本教授から語られます。その太刀さばきは縦横無尽で、宮本武蔵は本当に強かったのかをめぐる菊池寛と直木三十五の論争から、製品アーキテクチャ論自体のポジショニング戦略まで、ここかと思えばあちらへ飛び移る息をもつかせぬ速射砲が知的好奇心を撃ち抜く技は見事の一言に尽きます。この本の書評としては、空前絶後の面白さといえます。
(聞き手:賢者のワイン店番・上野善久)